[世界樹の迷宮Ⅱ]ウィルの冒険5(3階)
件のFOEの部屋は、やってみればあっさりと、普通に突破できた。
しかし、扉を潜って一安心かと思いきや、またすぐにFOEが僕たちの眼前に現れたのだ。
しかも、避けて進めるだけのスペースのない通路にとどまって、動く気配を見せない。
「まいったな、あそこに居座られたんじゃ、どうしようもないぜ」
セトがお手上げといった風に、肩をすくめてみせる。
「倒して行くしかないんじゃないかの。先刻の部屋で感じた絶望的な気配と、こいつは別物なのではないか?」
ラフィニアが楽観論を述べるが、自分でも半信半疑といった様子だ。
「とりあえず、ちょっと怖いけど、近付いてみるしかないね」
僕が提案する。
試しにかなりの距離まで近付いてみたけど、相手は動く様子を見せない。
しかし一旦離れて、別方向──そいつの真正面──からアプローチしてみると、そいつは突然、僕たちのほうに向かって動きはじめた。
「わ、わ、来たよ! どうするのウィル!?」
「落ち着いて、パメラ。ひょっとして、この動きなら……毒を食らわば皿までだ、試してみよう。みんな、一度向こうに戻って!」
闘牛士が突撃してくる牡牛をかわすかのように、横手に回りこんだ僕たちの進行方向真横に、すぐ近くにそいつが並ぶ。
周囲にほかの敵の影は見えない。
よし、これでこっちの尻に食いついてくれれば…!
僕たちはそのまま真っ直ぐ進み…
……あ、あれ?
「……なんだか知らんが、向こうに行ってしまったの」
ラフィニアがぽかんとした様子で言った。
そいつは本当に、前しか見ていない牡牛のように、そのまま真っ直ぐに進んで行ってしまったのだ。
「とにかく今がチャンスだ。さっさと抜けちまおう」
「そうだね、進むよ、みんな」
「了解~、ってやだ、引き返してきたよ!?」
「大丈夫だ、こちらのほうが足が早い。一気に逃げ切れる!」
──とまあ、そんな感じで。
ドタバタしながらも二つ目の難を逃れることができたのだった。
けど、次以降来るときもまたこれを突破しないといけないと考えると、厄介だなぁ…