[ソードワールド2.0]付属シナリオの神バランス
いろんなところで散々吹聴しているが、僕はソードワールド2.0のルールブックⅠに掲載されているサンプルシナリオ『バルトゥーの屋敷』の戦闘バランスは、神バランスだと思っている。
普通のTRPGプレイヤーの感覚からすれば「難しすぎる」という評価になることも多いようだが、僕はこのゲームの第一手としてこのシナリオを提示してきたことを諸手をあげて褒め称えたい。
よくやってくれました! 素晴らしい!
ちなみに、ルールブックⅡ以降のルールやデータが使える環境だと、難易度はかなり下がる。
エンハンサーやアルケミストが使えることはもちろんそうだし、グラップラーなどは+10の必要筋力で1ランク上の装備が使えることが非常に大きい。
ので、ここでの話は「ルールブックⅠしか使えないときの話」として聞いていただきたい。
さて、僕がこのシナリオをプレイしたときに使ったキャラクターは、ルーンフォークのグラップラーだった。
グラップラー2、スカウト1。
戦闘特技は《武器習熟/格闘》と《防具習熟/非金属鎧》とで悩み、最終的に「折角グラップラーなんだから」と浪漫を追い、死亡覚悟で《武器習熟/格闘》を選択。
防具は〈クロースアーマー〉で2点ぐらい防護点を付けても焼け石に水だと思い、それよりは〈ポイントガード〉で回避力を上げたほうが賢明と判断した。
(この判断が適確だったのか、今でも迷うところだ。このあたりも実に良バランスだったと思う──ちなみに今なら筋力が15あればAランクのアラミドコートが着れるので、この葛藤はなくなってしまった)
ところでこの『バルトゥーの屋敷』、何といっても恐ろしいのはボス戦だが、実はその前段階、雑魚戦のバランスも神がかっていると思っている。
敵構成はゴブリン×3、ボガード×1。
なんてことのない敵構成に見えるが、僕としてはこれこそがベスト、と感じるバランスだった。
まず先制値はゴブリン、ボガード同値で11。
敏捷ボーナス+2、スカウト1レベルのキャラクターで、8以上を出さなければ先制を取れない値だ。
ほかにスカウト技能を取得しているのキャラクターがいなければ、ほかのキャラクターも平目で振れる事を考えれば、プレイヤー側が50%強の確率で先制を取れる計算になる。
さて「ゴブリン」というと雑魚モンスターの典型のように扱われるが、グループSNEのゲームでは、この辺の雑魚敵を甘く見すぎると痛い目に遭うことになる場合が多い。
ソードワールド2.0もその例に漏れずで、初期で戦うと「確かに弱いけど、数が多くなると意外と怖い」という絶妙のバランスになっている。
上記の僕が作成したグラップラーを例に取ると、このキャラクターは回避力5、防護点0、最大HP25である。
これに対し、敵のゴブリンの命中力は3、打撃点は2d+2。
敵が命中力判定のダイスを振らないと仮定すると、6/36の確率で攻撃が命中し、2d+2点のダメージをダイレクトに受けることになる。
これが3体。
さらにボガードが1匹いる。
これが命中力4、打撃点が2d+5という大ダメージ。
さらに恐ろしいことに、こいつは「連続攻撃」を持っていて、1発目が直撃すれば2回目の攻撃が待っているのである。
お分かりいただけるだろうか。
この雑魚戦は、ただMPを消耗し、プレイヤーのカタルシスを満足させるだけの茶番ではないのだ。
1ラウンド目からいきなり、死の可能性と直面する戦闘なのである。
ちなみに、このキャラクターが前のめりだから死亡可能性が比較的高いということはあるが、それ以前に、防御力特化でキャラクターを作りでもしない限り、大抵どんなキャラクターでも死の可能性には晒されるバランスである。
また、その脅威の度合い(確率)も絶妙だと思う。
おそらく、実際にこの戦闘をマスタリングする場合、ゴブリンやボガードの知能が「低い」であることも鑑みて、近くにいるキャラクターにランダムで攻撃をするという処理をするケースが多いと思うが、このようにして攻撃が散れば、この戦闘でプレイヤー側に戦闘不能者が出る可能性は、かなり低くなるものと予想される。
あまり厳密に計算していないが、おそらく1%よりは高く、5%よりは低いといった程度のものじゃないかと思う。
生死判定に失敗して死者が出てしまう確率となれば、これよりもさらに大幅に低くなる。
しかし当のプレイヤーからしてみれば、運悪くゴブリン3体の攻撃が命中しても死ぬし、ボガード1体の連続攻撃を2発直撃しただけでも高確率で死ぬという図式は、無視できない脅威として感じることができる。
この程度が、雑魚戦の脅威としては適切だろうと思うのだ。
ん、とりあえず、今日のところはこのぐらいにしておいてやろう。