ブログトップ

Stray thoughts

ikapon.exblog.jp

随想。あるいは道に迷った思考。

[TRPG]ソードワールドの行為判定の目標値

 昨日、友人たちと話していて納得がいかなかったので、自分の考えている問題意識を整理してみよう。

 例えばソードワールド2.0でGMが、扉に掛かっている鍵を解除するための「解除判定」の目標値を決めようとする際、「この扉は一般的な家屋の扉だから、目標値は14にしよう」というような決め方をすることは、まずない。
 実際のところは、「スカウト技能をもったキャラのスカウト技能レベルが2で器用度ボーナスは3だから、基準値は5で、2d6で7以上を出したら成功するぐらいがいいかな、じゃあ目標値は12にしよう」といったように、目標値をキャラクターの能力から逆算するGMが、ほとんどだと思う。

 すると、どうなるか。
 スカウトのプレイヤーが、スカウトの技能レベルを1にしても2にしても3にしても、結局のところ「7以上で成功する値」にGMは目標値をセッティングしてしまうことになる。
 これでは、スカウト技能のレベルを上げて解除判定の基準値を上げることに、実質的な意味がなくなってしまう。

------------------------------------

 それではまずいので、GMは次善の策として、「パーティの冒険者レベルの平均」から目標値を逆算するようになるかもしれない。
 「冒険者レベルの平均が2なら、まともなパーティなら1~2レベルのスカウトが1人はいるだろう。スカウトを担当するキャラなら器用度ボーナスは2~3はあるだろうな。そのぐらいのまともなスカウトがいれば、2d6で7以上を出せば成功するぐらいにしたいから、目標値は11にしよう」といった寸法だ。
 こちらならば、スカウト技能のレベルをコンスタントに上げていくことに意味はあるし、キャラクターの器用度の高低も実質的な意味を持つようになる。

 しかしこれでも問題は残る。
 レベルの上昇に伴ってオートマティックに目標値が上昇していくため、プレイヤー側に、イタチゴッコをやっているだけという印象が、どうしても強く残ってしまう。
 キャラクターの実質的な能力は、常に「平均値との比較」で求められることになり、1レベルであるか10レベルであるかは重要ではなく、そのレベル帯の平均値と比べて1高いか1低いかということのみが問題となる。

------------------------------------

 また、実際のセッションで、レベルの上昇に応じた「適切な難易度の鍵」にしか遭遇しないことも、いかにもご都合主義的で不自然である。
 世界中にはもっといろんな難易度の鍵が偏在しているはずなのに、実際に遭遇する鍵は、自分たちの実力に見合ったものばかりなのだ。

 ただ、「ご都合主義的」であることは、「ドラマ的」であるとも言い換えられる。
 TRPGのセッションはドラマを構築するものであり、「ドラマ的でないリアリズム」が介在する余地はないという考える人にとっては、この点は問題とはならない。

------------------------------------

 とは言え、これらの問題は、一般行為判定に固有のものではない。
 戦闘に関しても同様に言えることあるように思える。
 実際、旧版ソードワールドのファイター技能レベルの上昇は、「世界との関係」を除いて見てしまえば、ほぼ、ただのイタチゴッコである。

 ただ、例えばの話、それまでゴブリンと戦っていたパーティが、レベルアップすることにより、数値が1点ずつ上昇しただけのゴブリンLv3やゴブリンLv4と戦うことになるだけなら、もっと「イタチゴッコ感」は強くなるだろう。
 それが、実際にはホブゴブリンやオーガーと戦うことになることで、なんとなく「強くなった感」が実感できるようになっている……ある程度は。
 つまり、一定の能力値に固定された「モンスター」という存在が、イタチゴッコ感を緩和している側面はあると思うのだ。

 この点、解除判定などの一般行為判定はあまりにもシンプルな上に、「世界との関係」も薄いため、イタチゴッコ感が強く残ってしまうのだと思う。

 「世界との関係」というのは、戦闘能力であれば、「ゴブリンと戦える程度の能力」と「ドラゴンと戦える程度の能力」とでは、プレイヤーの感じるイメージが大きく異なるということだ。
 だから例えば、「魔動機文明時代の遺跡の扉の鍵」なら目標値11、「魔法文明時代の遺跡の扉の鍵」なら目標値17、「神紀文明時代の遺跡の扉の鍵」なら目標値23──というように、世界に基づいた一定の数値がシステム上でガチッと定められていれば(そしてそれが実際のセッションで問題なく使われる程度に使いやすく納得のいくものであれば)、世界との関係でキャラクターの能力を捉えられるようになり、イタチゴッコ感は大きく緩和されるのではないかと思う。

------------------------------------

 ところで、ソードワールドのような「上方ロール」のシステムは、GM側もプレイヤー側も、ついでに言えばデザイナーまでもが、どうしても「基準」を把握しづらくなる傾向がある。
 ソードワールド2.0が仮に「2d6で基準値以下を振れば成功」となる下方ロールのゲームだったとすると、だいぶ一般行為判定の成功率の印象が変わってくるのではないだろうか。

 スカウト技能レベルが2、器用度ボーナス3のキャラクターの解除判定の能力は、初期のスカウトとしては優秀だが、その基準値は5。
 2d6で5以下を振らないと成功しないなら、その成功率は10/36。
 実際にプレイしたときにこの成功率であるならば、とてもじゃないが「優秀なスカウト」という感じはしないだろう。

 しかし一方で、初期のキャラクターが「駆け出し」の冒険者であることを想定に入れるなら、この成功率はある程度、納得のいくものであるように思う。
 そしてこのキャラクターが冒険を重ねて経験を積んでゆくにつれて、だんだんと成功率が伸びていく様は、いかにも「成長している」という感じがする。
 キャラクターのスカウト技能レベルが7になり、器用度ボーナスも4になった頃には、基準値は11。こうなれば、並みの鍵であれば1ゾロを振らなければ……じゃない、6ゾロを振らなければ成功する。

 もちろんGMは、「並みの鍵」でない、もっと複雑な構造の鍵であれば判定値にマイナスの修正を与えても良いし、逆にとても単純な構造の鍵であるならば判定値にプラスの修正を与えても良い。
 それを考慮に入れれば、下方ロールであっても、本質的にやっていることは、上方ロールと同じである。
 2d6で基準値以下を振れば成功になる下方ロールであれば、目標値14の上方ロールを行なうのと、本質的には同じことだ。

 だが決定的に違う点がある。
 その「基準」の見えづらさだ。
 上方ロールだと、「並みの鍵」に対するときの成功率がどの程度であるかというのが、実に見えづらいのだ。

 だからGMは、その鍵が並みのものであるか、複雑なものであるか、単純なものであるかということを考える前に、キャラクターの能力から目標値を逆算してしまいがちになる。
 このため、キャラクターの能力の向上が、実質的な意味を持てなくなる。

 もちろん、「ソードワールド2.0では一般的な行為判定の目標値は14です」と明確に記述してあれば、この限りではない。
 だが実際にルールブックに表記されているのは、「目標値11:技能を持っているだけでは五分五分」といったような、キャラクターの能力から逆算したものを日本語に直しただけのもので、ぶっちゃけて言えば、一定の「基準」を設ける気が無い。
 この点で、下方ロールのゲームとは大きく性質を異にしている。

 つまり、キャラクターの能力を実感するためのモノサシを欠いている状態。
 先に例としてあげたような遺跡の種類ごとの目標値を定めるのは、モノサシを用意するという意味もあるわけだ。
 (というより、「世界」というのが尺度であり、モノサシであるというのが妥当か)
 だからこの数値はあまりみだりに上下させないほうがいい。
 モノサシがその都度その都度で長くなったり短くなったりしては、モノサシの役割を果たせないからだ。

------------------------------------

 ……と、そんなことを言いたかったのだが、どうにもリアルでの会話は弱いなぁと思うところ。
[PR]
by ikapon24 | 2010-08-14 10:53 | TRPG論考