[TRPG論考]シーフを考える(2)
無印ソードワールドの行為で言えば「忍び足」と「潜伏」がこれにあたります。
……ぶっちゃけこれ、「隠密」って一括りにしたほうが実プレイで使いやすいと思うんだけどなぁ。
まあ、さておき。
隠密行動と言えば、例えば敵の拠点に単身潜入して情報を獲得したり、ダンジョンで単身先行して先の様子を見てくる、などといったケースが想定されます。
隠密行動も、罠探知/解除などと同様、単独行動であるというデメリットは持っているのですが、それを抜きにすれば、隠密行動をしているときのドキドキ感は十分に「面白い」と言って差し支えないものだと思います。
実際、全員で動いていたら赤信号みんなで渡れば何とやらで、隠密行動の魅力は半減してしまう気もしますし、これはこれで普段地味なシーフの特権であるとしても良い気もします。
ただ、隠密行動には、気になる点が2つあります。
1つは、大抵のゲームで、あるいは大抵のGMは、この隠密行動の成功率を、他の判定のノリで五分五分程度に設定してしまうということです。
隠密行動は先にも言ったとおり普通単独行動になるわけで、もし発見されたら非常に、非常に大きな脅威に晒されることになるのが常だと思います。
物語主義を抜きにしてリアルに判断すれば、その瞬間、デッドエンドが半確定するといって差し支えないような状況が多々あるでしょう。
それなのに、五分。
アリアンロッドのフェイトのような確率操作リソースがあるならまだ分からんでもないですが、そうでなければとても命を張れる確率ではありません。
必然、プレイヤーは隠密行動を取ることに消極的になってしまいます。普通にパーティで動いたほうが、リスクが少ないと判断されるからです。
多くの状況において、隠密行動の成功率は、最低でも80%程度はほしいところでしょう。
また、その成功率に関しては、プレイヤーサイドからある程度の目安として観測できる必要があります。
もう1つは、今日のファンタジーTRPGのセッションでは、そもそも危険を冒して隠密行動をするだけのメリットがない、という状況が一般的であるように思うことです。
敵のバランスは正面衝突しても勝てるように調整されています。全員で挑む限り、戦術を間違えなければ戦闘は安全です。
このような状況では、下手に隠密行動なんかして自分の身を危険に晒すのは、むしろ愚かな行為とすら言えます。
つまり、リスクに対してリターンが見合わない、というのが、多くのセッションにおいてシーフが隠密行動を行なわない原因となっているのです(多分)
その行動は、プレイヤーのゲームプレイという観点からすれば、合理的な選択と言えます。
そして誰も、シーフらしいシーフをやる以上、「愚かなシーフ」とは思われたくないでしょう。
このような状況を回避するためには、隠密行動に成功した結果が大きな「ブレイクスルー」となるように状況を設定する、というのが1つの解決策となると思います。
戦術上のブレイクスルーでも良いですし、遅々として進まない情報収集に対するブレイクスルーでも良いでしょう。
とにかく、「状況を一撃で打破できるような何か」が隠密行動によって得られるのであれば、多少の危険を冒してでも隠密行動を行なおうという指向は生まれてくると考えられます。
ただし、それがブレイクスルーになりうるということが、プレイヤーサイドから観測できる必要はあります。
その行動がブレイクスルーになりうることは、GMだけが知っていても意味がありません。
というわけで、
結論1:隠密行動の成功率は最低でも80%程度に。
結論2:隠密行動が成功したら大きなブレイクスルーを得られる。
結論3:それらの情報がプレイヤーサイドからある程度、観測できる。
といった感じで、シナリオ制作やセッションハンドリングをすると、隠密行動が生きてくるんじゃないかと思います。
……とは言えこれ、致命的な欠点があって、GMの掌で踊らされている感を感じると、どうにも萎えてしまう気がするんだよなぁ。
もうちょっと何かいい手はないものか。