[TRPG論考]非戦闘スキルの問題は使用頻度にあり
プレイヤーは、使用頻度の高い要素にリソースを割り振る。
当たり前だ。1セッションに10回以上出番のある〈槍〉技能を+1するのと、せいぜい5セッションに1回ぐらいしか出番のない〈跳躍〉技能を+1するのとでは、前者を選ぶに決まっている。
本来、両者の取得コストは50倍ぐらい違わなければならないはずなのである。ところが実際には碌な差はない。だったらプレイヤーは〈槍〉技能を選ぶ。実に合理的な選択だ。
ところがこの合理的な選択を「パワープレイ」と罵る人々が……まあ、最近はさほど見なくなったけれど。
ちなみに、使用頻度が高くても役に立つと感じられなければ、やはり取得対象にはなりにくい。
例えば高レベルのアリアンロッドで中途半端に回避を伸ばすプレイヤーは、素人かゲーム音痴のどちらかだ。
だから重要なのは使用頻度であり、それがどれぐらい役に立つか、なのである。
結局のところTRPGなんてものは、ギリギリデッドリーなガッチガチのゲームにするよりは、ゆるりとした歓談交じりのレクリエーションであるとしたほうが無難かつ実践的ではあるので──ゲームを進める上でそのほうが有利であるかどうか、なんてのは実はあまり感覚的にピンと来ない。
例えば、「〈跳躍〉技能は使用頻度は低いが、1回の判定には〈槍〉技能の50倍の価値がある。具体的には判定に失敗したら崖から転落して即死する」なんて仕様にしたら……まあGMに対する説教タイムが始まるだけだ。
そういうのではなく、取得したスキルがセッション中に役に立つ、というだけでプレイヤーはそれなりに満足なものなのだ。
ガープス・ベーシック完訳版p251の「良い冒険の要素」は、実に良い指針である。
多くの非戦闘系技能を使う機会を設けることや、交渉系能力の出番を意識して作ることは、変にやりすぎなければ冒険に良い彩りを添えてくれる。
ソードワールド2.0のルールブックⅠの付属シナリオは、実に良いお手本だった。
プレイヤーは過去のプレイ経験によって、「勘」に補正をかける。
このシナリオのようなセッションばかりを体験していれば、スカウト技能が先制判定のための技能だなどという認識を得ることはないだろう。
ただ一方で、あまり露骨に「見せ場」を作られても逆にげんなりする部分はある。
キャラクターが〈跳躍〉技能を取得したのを見て、じゃあ毎回のセッションで〈跳躍〉技能が必要とされる場面を用意しようとGMが考えたのならば、それはプレイヤーとしても何だかもにょもにょするところだろう。
本来こういう部分は、ゲーム全体の性質から見て平均的にバランスよく配置されるべきで、特定のキャラクターの能力にあわせて作るような部分ではないのだと思う。
プレイヤーが、5セッションに1回ぐらい出番があるんじゃねーかと踏んで、〈跳躍〉技能に0.5CPを費やしてみる。
GMが、多くの非戦闘系技能を使う機会を設けることを意識してシナリオを作り、その結果、5セッションに1回ぐらい〈跳躍〉技能に出番が生じる。
これが一番望ましい流れであり、あるべき姿なんでないかなぁと思うわけである。